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爬虫類特有の瞳が、ぎろりと男をにらんだ。
「やめておけ」
男が言った。
「お前たちの非道は気にくわないが、今なら見逃してやる。さっさと消えろ」
男が壱尾をにらみ返す。
「ぐはは」
壱尾が笑った。
「笑わせるな。手下を倒したぐらいで、いい気になるなよ。今のお前の太刀筋なら、我ら三兄弟の厚いウロコには通用せぬわ」
「そうか」
男が言った。
「忠告はしたからな」
男が言い終わると同時に、壱尾が跳んだ。
ずらりと並んだぎざぎざの鋭い牙をむいて、男の首筋に噛みつこうとする。
男は無造作に刀を振りかぶると、息を吸った。
それも束の間。
息を吐き出しながら振るった黒鞘の刀が、壱尾の頭に真上から打ち込まれた。
ものすごい衝撃音と共に壱尾の頭がひしゃげ、完全に破壊される。
壱尾が男の足元に倒れ、動かなくなった。
「「兄者!」」
弐尾と惨尾が同時に叫ぶ。
が、兄の元には駆けつけられない。
今、男に近づけば兄と同じ死の運命をたどることになる。