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「『星の子』を傷つけてはならぬぞ!」
カーミラの声が高くなった。
優がトワに追いつき、ケルベロスと蛇姫の前に立つ。
背後にトワを庇う。
しかし、その身体は小刻みに震えていた。
カーミラやケルベロス、蛇姫の闘気は、何の武芸の心得もない常人の心胆を寒からしめるには余りあるものであったが、それでも優はその場に踏み留まった。
ひとえにトワへの想いからだ。
まだ、村で平和に暮らしていた頃から、徐々にではあるが気づいてはいた。
母をウロコ衆に殺され、トワと二人になってから、特にその気持ちは強くなった。
優はもはや、己の心に嘘はつけなかった。
トワの全てが好きだった。
それは紛れもない愛であった。
(俺はトワを守る!!)
不退転の決意が優をすさまじい恐怖に立ち向かわせた。
一方のトワは、お龍と見つめ合っていた。
時間にすれば、ほとんど無いに等しい、この二人の短い交流の中にトワは何を感じたのか?




