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二人の眼が合い、抱き合う。
お互いの首筋に噛みついた。
二人の血液が循環する。
「何をしておるのじゃ、見苦しい! これだから、人間どもは…ああ、醜い!」
カーミラが言った。
蔑みの視線を二人に向け「殺せ!」と下僕に命じた。
ケルベロスと蛇姫が二人に近づく。
虎造とお龍が使っていた洞窟から、ひとつの影が走りだしたのは、そのときだった。
最初の影の後を慌てて、もうひとつの影が追う。
トワと優である。
トワが優の手を払い、突然、洞窟の外へと飛びだしたのだった。
トワは倒れている二人へと駆け寄った。
二人の側に座り、お龍の頬に右手で触れる。
「待て!!」
カーミラが慌てた。
ケルベロスと蛇姫を制止する。
ケルベロスは残っている頭で飼い主を見つめ、蛇姫は操り人形の如く、ぴたりと動きを止めた。
虎造とお龍とは違い、蛇姫は何の感情も持たず、ただカーミラの命令を実行するだけの傀儡と化していた。