75/147
75
ケルベロスは虎造が、蛇姫はお龍が負わせた傷であった。
自分の下僕たちが形勢不利と見たカーミラが戦いの途中で介入し、虎造とお龍を血管の触手により散々に痛めつけたのだ。
「詩音めが、余計なことをしおって」
カーミラが吐き捨てた。
「わらわに歯向かう者たちの手助けをするとは」
苦虫を噛み潰したような表情だ。
虎造とお龍は両手を地に着き、立ち上がろうとしていた。
が、両脚を手酷く攻撃され、もはやそれは叶わない。
全身の出血も尋常ではなかった。
吸血鬼とはいえ、このままでは生命を失う。
「ぐっ…ここまでか」
虎造は、うめいた。
隣のお龍を見る。
自分と同じくお龍も死にかけている。
虎造は、お龍へと手を伸ばした。
お龍がそれに気づき、自らも手を伸ばす。
二人は手を繋ぎ、お互いを引き寄せた。
「龍、俺の血を吸え」と虎造。
自分を犠牲にしようとも、お龍に少しでも長く生きて欲しかった。
「虎、あんたこそ」
お龍が言った。