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星繋ぎ  作者: もんじろう
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「この花々の匂いと思い込み、私がひそかに流した、先ほどとは別の種類の香料をお二人ともに吸い込まれましたね。油断されましたな」


「何だい」


 縫が緊張感の無い声で言った。


 花をひとつ手折り、鼻へと寄せる。


「この花の匂いじゃなかったのか」


 言い終わると同時に縫の身体が跳ね上がり、無法丸の頭頂部に右手をついて、逆立ちの状態になった。


 左手には紫の花。


 それも束の間。


 無法丸の首へと両腕を回し、背負われた格好となる。


 無法丸の顔に自分の顔を近づけ、二人の顔の間に紫の花を持ってきた。


「てっきり、花の良い匂いだと思ったのに! ねぇ、無法丸」


 無法丸は答えない。


「このきれいな花たちを寝床にして、これから二人で甘いひとときを過ごそうと思ってたのにさー」


 縫の言葉に無法丸は何の反応も示さない。


「はははは!」


 楽法が大笑いした。


「どうやら遅かったようですね。お二人のお楽しみは、あの世で続けられるが良いでしょう。すでに音を聞き、匂いを嗅ぎ、眼を見てしまいましたので、もはや逃れる術はありませぬよ」


 楽法がいっそう琵琶を激しく、かき鳴らした。


「あとは私が命令するだけ。今さら耳を塞いだとて、完全には音を防げない。まあ、塞ごうとしても見過ごしませぬが」


「なるほど、その手もあるのか」

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