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両拳を振り上げ、敵の只中へと突っ込んでいく。
虎造の拳が当たったカーミラの下僕たちは、たやすく肉体を破壊され、粉々に四散した。
詩音に血を吸われ、その眷族となったことで、虎造の力は以前よりも格段に増していた。
もはや下級の吸血鬼など、足元にも及ばない。
次々と現れる吸血鬼たちの中へ、お龍も飛び込んで虎造に加勢する。
二人は獅子奮迅の動きを見せ、敵を徹底的に粉砕した。
しばらく後、山の如く折り重なり倒れた怪物たちの中心で立っているのは只の二人、虎造とお龍だけになった。
「はっ」
お龍が笑った。
「てんで歯応えが無いぜ!」
洞窟の入口まで出て、様子を見ていた優とトワは、あまりの戦いの激しさに言葉を失っている。
虎造が突然、振り返り、霧の向こうをにらんだ。
とっさに身構える。
お龍も、そちらに顔を向けた。
霧の中に三つの影が見える。
女二人の影と巨大な双頭の犬の影だ。




