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トワの顔が優のそれに近づく。
決死の覚悟で、どうやってトワを守ろうか必死に考えを巡らせている優は気づかないが、優を見つめるトワの顔は真っ赤になっていた。
うなじまで赤い。
その様子を見たお龍は、くすりと優しい笑顔を浮かべた。
「なるほど」
お龍がトワと眼を合わす。
「いいかい」
お龍が言った。
「惚れたら、どんなことがあっても離しちゃ駄目だぜ。何があっても食らいついて、一生そばに居るのさ」
お龍の言葉にトワは、にっこりと笑って頷いた。
優はわけが分からず、首を傾げている。
「あはは! まったく、かわいい子たちだね!」
お龍が笑った。
「龍っ!!」
入口に居る虎造が呼んだ。
お龍の表情が引き締まり、虎造の元へと走る。
「来たかい?」
お龍が訊いた。
「見ろ」と虎造。
先ほどまでは無かった濃霧が、洞窟の辺り一面を覆っている。
霧の向こうには、ゆらゆらと揺れる大勢の人影が見える。
「あの女だ」と、お龍。
「気合い入れろ!!」
虎造が立ち上がった。
「あいよ!」
お龍が答える。
霧の中から無数の肌色の青い人々が現れた。
カーミラに血を吸われ下僕となった者、またはその下僕たちに血を吸われ、さらに下僕と化した者たちである。
両手を前に突きだし、ふらふらと虎造たちに向かってくる。
「おおおっ!!」
虎造が吼えた。