67/147
67
「ほう、珍しい人間じゃな。わらわの下僕に加えてやろう」
木々がまばらに立つ荒れ地に入口を開けた洞窟。
入口付近で外を向き、どっしりと腰を下ろした大柄な男。
虎造である。
油断なく、辺りに眼を配る。
虎造の背後、洞窟の半ば程の場所に、抱き合って座る優とトワの姿があった。
二人の表情は不安げだ。
「そんなに怯えんなって」
少年たちのすぐ側に座った女が声をかけた。
縫の糸で宙吊りだった二人を拐った女、お龍である。
「あたしたちは、お前らをどうこうしようってんじゃねぇ」
少年たちを見つめるお龍の顔は優しかった。
「お前たちを狙ってるカーミラって女に用があるだけさ」
カーミラの名を聞き、少年たちはびくりと震えた。
ついこの前、襲われた記憶も生々しい。
しかも今や、頼りにしていた無法丸と縫も側には居ないのだ。
(俺がトワを守らないと…)
優は唇を噛みしめ、細く弱々しいトワの身体をいっそう強く抱き寄せた。




