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落ちていく二人が見えた。
「南無三!!」
縫が少年たちに糸を放った。
ぎりぎりのところで糸は間に合い、二人は宙吊りになる。
縫が糸の手元を崖っぷちの複数の出っ張りへと分散させ固定する。
「やった!!」
縫が両手を挙げて喜ぶ。
無法丸が縫の隣へ駆けつける。
「よくやった!」と無法丸。
縫が両眼を閉じ、唇を尖らせた。
「んー」
無法丸に顔を近づけてくる。
無法丸は、ため息をついた。
崖下を見る。
「おい!!」
大声で言った。
「何!?」
縫が驚いて、下を見る。
崖下で宙吊りになっている少年たちの側に、一人の女が居た。
女は二人を吊っている糸を掴み、少年たちの横にぶら下がって居る。
崖下にはまだ距離があり、常人が跳び上がれるような高さではない。
女は優とトワを巻いた糸を片手に持ち、二人を支える糸を手刀で断ち切った。
少年たちが、今度は女と共に落下していく。
「縫!!」と無法丸。
縫が無法丸の腕の中へと、さっと滑り込む。




