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両手に「くない」を振りかざし、自らの口に生えたウロコ衆の証の牙を剥き、無法丸へと襲いかかる。
蛇姫の牙には猛毒があり、噛みつかれれば、ただでは済まない。
無法丸が気を練りつつ、蛇姫を迎え撃とうと構えた、そのとき。
「無法丸!!」
縫が叫んだ。
珍しく慌てていた。
蛇姫が動くのと同時に、無法丸たちに迫ってきた者が居る。
楽法である。
楽法は琵琶を奏でる手を止め、素早い動きで無法丸たちに近づいた。
縫の魔糸が楽法を絡め取ろうと飛んだが、楽法の右手の琵琶の撥が、その全てを弾き返す。
それゆえの縫の叫び。
「無法丸!!」であった。
楽法は縫を攻撃せず、無法丸へと跳んだ。
撥で無法丸の首を掻き斬ろうと狙う。
無法丸は楽法の攻撃をかわすため、身を沈めつつ、同時に襲ってくる蛇姫の腹へと黒鞘の一撃を打ち込んだ。
両腕を組み仁王立ちし、まるで関心なさ気にこの戦いを見つめていた美剣の双眸が、無法丸の動きに輝いた。
「ほう」




