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崖の縁近くに少年二人が立ち、やや離れて無法丸と縫が立っている。
美剣は大刀の刀身についた血を振り払うと鞘に納めた。
「つまらぬ」
美剣が言った。
「何の手応えもない雑兵どもめが」
大刀を刀吉に預ける。
再び、胸の前で両腕を組んだ。
「後は好きにせい」
美剣が吐き捨てた。
楽法が、お辞儀で答える。
「惨尾!!」
大蛇から落ちた蛇姫が呼んだ。
「頭領に報せよ!」
蛇姫の声に惨尾は、はっとなった。
地を這い、森の方向へと逃走を始める。
惨尾の動きを確かめた蛇姫は、無法丸たちへと走った。
「星の子」だけでも拐い、この場から逃げようという苦し紛れの策であった。
ウロコ衆が、このままおめおめと引き下がれないという誇りもある。
屋守翁への報せは出した。
後は己が生命を懸けて敵に挑むのみ。
蛇姫は両手にひとつずつ棒状の武器「くない」を握り、疾走した。
優と抱き合うトワを目がけて突進する。
無法丸が、その進路に立ち塞がった。
蛇姫の身体が跳んだ。