60/147
60
ウロコ衆は厳しい修行に耐え抜いた忍びの集団である。
数で勝るこの状況で、命を惜しんで怯む者など一人も居ない。
では何故、弐尾たちは足を止めたのか?
楽法の「動くな」の声を聞いた瞬間に金縛りにあった如く、身体が動かせなくなったのだ。
楽法が優雅な所作で、美剣にお辞儀をして見せた。
「美剣様。ご覧の通り、奴らは動けませぬ。今のうちに、その素っ首を斬り落としてやってくださいませ」
美剣の兜の下から覗く双眸が、楽法をぎろりとにらんだ。
「児戯にも等しい、くだらん技よ」
美剣が言った。
「どうした、兄者!!」
惨尾が叫んだ。
声をかけられた弐尾の方はというと、やはりどう身体を動かそうとしても、ぴくりとも動けない。
惨尾の呼びかけに答えることすら出来ないのだ。
「将軍家のためにも、一刻も早く『星の子』を連れ帰らねば」
楽法が美剣に言った。
「ここは何かとご不満もあろうこととは思いますが、是非とも」