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蛇姫を避け、左側へと走りだす。
後ろから迫る忍びたちは、縫の糸に前進を阻まれた。
無法丸たちは森を抜け、開けた場所へと出た。
さらに進むと、その先には。
無法丸が足を止めた。
「行き止まりか」
崖っぷちになっていた。
下には川が流れているのが見える。
常人が飛び降りれば助かる見込みはない。
「来るよ!」
縫が告げた。
大蛇に跨がった蛇姫と弐尾、惨尾、そして忍びたちが無法丸たちへと向かってくる。
もはや退路は断たれた。
鎌首を持ち上げた大蛇の上から、蛇姫が呼びかけた。
「『星の子』を渡せ」
優がトワを後ろに庇い、さらに無法丸が優を庇う。
縫はその横で、ゆらゆらと揺れていた。
「トワを渡せば助かるらしい」
縫が言った。
それを聞いた優がトワを抱きしめる。
無法丸の眼が吊り上がった。
「言ってみただけー」
縫が「てへっ」と舌を出す。
「断る!」
無法丸が怒鳴った。
「では、死ね」
蛇姫が言った。




