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このまま進むと思われた足を突然、無法丸が止めた。
「待て!」
後ろの三人に無法丸が言った。
「何か居るぞ!」
無法丸は眼を凝らした。
何かの気配を感じる。
弐尾と惨尾、忍びたちが追いつき、縫とにらみ合った。
無法丸の両眼が木々の間をつぶさに探る。
居た。
何か大きなものが蛇姫の周りで動いている。
その、地面を這うものが、蛇姫の傍らに顔を現し、鎌首をもたげた。
巨大な蛇だ。
口が大人を丸飲みできるほどもある。
全身が見えぬほど長く、太い。
蛇姫が大蛇の頭を撫でた。
「いいかい。『星の子』は駄目だ。他の奴らは食ってもいい」
蛇姫が淡々と言った。
「いけ!」
蛇姫の号令と共に、大蛇が無法丸たちへと滑りだした。
無法丸が、ひと息を吸い込む。
大口を開け、突っ込んできた大蛇へ、無法丸の刀の一撃が横殴りに叩きつけられる。
すさまじい衝撃音。
大蛇の頭が横へと飛び、近くの木々へと激突した。
「こっちだ!」
無法丸が三人を呼んだ。