54/147
54
惨尾には常人には無い武器がある。
惨尾の太い尻尾が唸りをあげ、無法丸の顔面へと飛んだ。
無法丸が尾の先を刀で受ける。
瞬間。
無法丸の右手首が返り、刀を下方向へと向けた。
いつの間にか地を這い寄って来ていた弐尾が、惨尾と同じ動きで尻尾を振り、無法丸の脚を払おうとしていたのだ。
無法丸の刀が弐尾の尻尾を受け止めた。
無法丸は弐尾を蹴飛ばし、刀を下から跳ね上げ、空中の惨尾の背中に突き入れた。
惨尾が地に落ちる。
開けた前方へ無法丸を先頭に、優とトワ、縫が進む。
無法丸たちの左右に二人ずつ分かれていた忍びたちが、再び刀で突こうと動いた。
縫の両手から銀色のきらめきが疾る。
四人の忍びは一瞬で手脚をぐるぐる巻きにされ、その場に転がった。
包囲の一角を破った無法丸たちは、そのまま前進する。
先ほどまで包囲していた忍びたちと、体勢を立て直した弐尾と惨尾が四人に追いすがる。
無法丸たちの前には森の木々の合間に立つ蛇姫のみ。