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「そうじゃ! 許せぬ!」と惨尾。
蛇姫は二人を無視した。
夕暮れの光の中、無法丸たちをじっと見ている。
「断る!」
無法丸が大声で答えた。
縫が蛇姫たちに尻を向け、右手で「ぱーん」と叩いた。
再び前を向き、あっかんべーをする。
蛇姫が右手を上げた。
一気に振り下ろす。
「殺れ!」
一斉に包囲が狭まった。
ウロコ衆たちはトワが傷つくのを恐れ、飛び道具は使えない。
刀を構え、無法丸たちに迫った。
二十人の手下に弐尾と惨尾も加わっている。
蛇姫だけが最初の位置で様子を見ていた。
無法丸たちは背面に敵が来る前に、正面を突破しようと突っ込んだ。
無法丸を先頭に次が優、トワ、縫と続く。
前方に四人の忍びが立ち塞がる。
四人は同時に無法丸に突きかかった。
四本の刃を無法丸の黒鞘が、次々と弾き返す。
四人の背後から惨尾が跳んだ。
空中で惨尾の身体が横方向に回転し、背中を向ける。
常人であれば、敵に隙を見せる迂闊な動きだが。




