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蛇姫、弐尾、惨尾を先頭に、集まっていた忍びたちの半数ほど、二十人が素早い動きで、その場を去った。
「各地に立つ戦国大名同士の争いに世は乱れ、将軍家も名ばかりで天下を治める力は無い」
屋守翁が呟いた。
「それゆえの『星の子』捜しであろうが…必ずや我らが、その身柄を押さえ将軍家に大恩を売り、再び召し抱えられ、名誉を取り戻してみせる」
屋守翁の濁った双眸が、ぎらりと光った。
嫌な予感がした。
無法丸が鍛治場に飛び込むと、日向がうつ伏せで倒れていた。
そのかたわらには、黒い鞘に納められ細い鎖を巻かれた、ひと振りの刀があった。
「日向!!」
無法丸が日向に駆け寄る。
仰向けにし、抱きしめた。
「無法丸…」
日向が息も絶え絶えに言った。
「しっかりしろ!!」
無法丸が呼びかける。
日向は弱々しく頷いた。
「魔剣が…」
日向の言葉に、無法丸が黒鞘の刀を一瞥した。
「お前! 何て無茶を!」
無法丸が怒鳴った。