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男から、やや離れたところで正座し、その様子を見つめ、魅入られたようになっている女が居た。
肩の辺りまでの金髪は陽の光を浴びて、きらきらと輝く。
肌の色は白く、顔にはそばかすが点々とあった。
二十代前半と思われる。
が、何やらあどけなさを残していて愛嬌がある。
大きめの瞳は濃い青色で、日の本の人間とは思えない。
眼鏡をかけていた。
舞っている男と同じく、踊り用の衣装に身を包んでいる。
男の踊りが終わった。
素晴らしく美しい、人の心を震わせる舞いだった。
男はゆったりとした動きで女の前へと移動し、正座した。
「お師匠様」
女が言った。
「とても素敵な舞いでした」
両手を胸の前で合わせて握る。
その手を軽く左右に振った。
両眼が感動で輝いている。
「ありがとう、ターシャ」
男が言った。
落ち着いた優しげな声。
「感動しましたか?」と男。
「はい!」
ターシャが頷く。
「私に心を開きましたか?」
男が、にこりと笑った。