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刹那。
銀色の無数のきらめき。
縫の掌中より射ち出された魔糸が優とトワの身体をカーミラの触手より、ほんの一瞬先に絡め取って、自分の方へ軽々と引き寄せた。
カーミラの触手が空を掻く。
少年二人は瞬く間に、縫の腕の中に飛び込んだ。
「よくやった、縫」
無法丸が褒めた。
「お礼は身体で、お願いします」
縫が真顔で言った。
無法丸は、ため息をついた。
再び、場は仕切り直しとなった。
ケルベロスに乗るカーミラの前に無法丸。
その後ろに優とトワを庇った縫という位置取りだ。
カーミラの双眸が激しい怒りに、赤く燃えあがった。
何ということか?
人間など自分にとって餌にすぎないというのに、出逢う者、出逢う者、散々に邪魔をしてくる。
未だに目的の「星の子」を手に入れられない。
これが怒らずにおられようか?
本気を出せば、こんなゴミ虫どもなど…しかし、それでは「星の子」を傷つけてしまうおそれがある。
(おのれ、どうしてくれようか!?)