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無法丸の黒塗りの鞘が、三本の刃の攻撃を弾き返す。
いったい、この鞘は何製なのか?
鋭い刃の攻撃を受けても、傷ひとつつかない。
周りに巻かれた鎖も同様に異常な頑強さと言えた。
一方の縫は斬りつけてくる刃をあるときは銀糸でいなし、あるときは自らの身体を銀糸で引っ張り、尋常ならざる身の軽さで巧みにかわし続ける。
しかし、さすがの縫も触手の速さに余裕は無いようだった。
「無法丸!」
縫が叫んだ。
「このままじゃ、まずいよ!」
長くはもたないという意味だ。
無法丸は頷いた。
表情が曇る。
確かに、このままではいずれ殺される。
攻撃に転じ、カーミラを倒さねばならない。
だが、無法丸の背後には優とトワが居る。
今、ここを離れれば二人が危険にさらされる。
呼吸を操り気を練る技も、こう矢継ぎ早に攻撃されては使う隙がない。
最初に見たときから分かってはいたが、敵は人とは思えぬ異常な技を持っている。
無法丸が、ちらりと己の刀を見た。