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再び、ケルベロスの背へと飛び乗る。
カーミラが両手のひらを前に出す。
血管の触手が手のひらから無数に飛び出し、うねうねとのたくった。
触手が束なり重なり合って、二本の大きく鋭い刃へと姿を変える。
「はっ!」
カーミラが気合いと共に刃を振るうと銀色の糸が切断され、前方が開けた。
ケルベロスが前進する。
カーミラが斬り、ケルベロスが走る。
この繰り返しが、どんどんと早まり、再び追跡が始まった。
「来るぞ」
無法丸が言った。
緊張の面持ち。
「あたしの糸をこんなに早く抜けるとはね」
縫が両肩をすくめる。
無法丸が足を止めた。
トワを地に下ろす。
優も止まった。
はあはあと肩で息をしている。
縫も止まった。
「やんの?」と縫。
「ああ、やる」と無法丸。
無法丸が背後を向き、黒鞘の刀を構える。
優とトワを背中で庇う位置だ。
縫は構えるでもなく、ゆらゆらと揺れている。
森の木々を抜け、四人の前に追跡者が姿を現した。




