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(さっき、宿の前に居た怪しい奴らか?)
まるでわけが分からないが、無法丸たちを追跡して来る。
無法丸は前を走る優とトワを見た。
そういえば何故、二人の村は襲われたのか?
略奪するものなど何もない貧村だった。
そして「ウロコ衆」と名乗った忍び集団は優とトワを追っていた。
今、追って来るのは「ウロコ衆」の仲間なのか?
気配が近づいてくる。
尋常な速さではない。
追手は宿屋の前に居た、あの大きな犬か?
(どのみち、トワの脚がもたない)
前を走るトワの脚は、すでにおぼつかなくなってきている。
(背負うか? いや)
無法丸は止まって戦うか迷った。
「無法丸」
横を走る縫が言った。
縫の息は、まったく乱れていない。
「あたしに任せな」
にんまりと笑った。
「足止めしてやるよ」
縫が道沿いから、やや外れた森を指した。
「くそがきども! あの森へ走りな!」
縫の言葉に二人は道を外れて進み始めたが、トワが蹴つまずき、転びそうになった。




