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星繋ぎ  作者: もんじろう
30/147

30

 二人は、お互いに右手を伸ばし握り合っていた。


「りゅ…う…」


「と…ら…」


 二人が微かな声で呼び合った。


 このままいけば、さほどの時はかからず二人は死ぬだろう。


 詩音が深いため息をついた。


「私と同じ苦しみを与えるのが良いことなのか」


 その声は沈んでいる。


「私は、この華のおかげで」


 帯の上の大輪の華を見つめる。


「人の血を吸う欲望は抑え込めるゆえ、まだ苦しみはましというものだが」


 詩音が二人に近づき、そばに腰を下ろした。


「やはり、このような悲劇をこのまま放っておくのは忍びない」


 詩音が、そう言って大きく口を開いた。


 二本の犬歯が長い。


 詩音の栗色の瞳が、一瞬で赤く染まった。


 瀕死の虎造の首筋に詩音が噛みつき、二本の牙を肌に沈めた。


 虎造の虚ろだった瞳が赤く輝き、全身が、がくがくと震えだす。


 詩音が口を離し、帯の上の赤い華から花びらを一枚ちぎった。


 虎造の口の中へと入れる。

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