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その太い枝のひとつに、小柄で艶やかな肉体をしどけなく寝そべらせる若い女が一人。
歳は二十代そこそこか。
ゆったりとした着物をだらしなく着崩している。
髪は夜の闇と同じ漆黒で髪型は、おかっぱ。
艶っぽい顔立ち。
寝そべったままの女の切れ長の眼が、こちらに走ってくる少年二人に向けられた。
月明かりで、ぼんやりとして見える。
「何だい、子供かい?」
そう言って、眼を細めた。
「あら。余計なのが、くっついてるね」
少年二人の後方から追いすがる複数の影。
十人、居る。
皆、忍び装束に身を包んでいた。
速い。
相当に訓練された動き。
少年たちは、あっという間に囲まれ進めなくなった。
「もう諦めろ! どうせ、逃げられぬぞ!」
少年二人の前に立つ忍びが言った。
男の声だ。
「おやおや」
騒動からは、やや離れた位置に居る樹上の女は呟いた。
「これは、ややこしそう。関わらないのが良いね」
そう言って、両手で頬杖をつく。