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「しぶとい奴。だが、もうお前たちにかまけておる暇はない」
女がそう言うと、手のひらからさらに無数の触手状の血管が姿を現した。
女の胸の辺りで、ぐるぐると束ねられ、槍の刃先の如く形を変える。
「わらわは『星の子』を捕らえねばならぬ。とどめを刺してやろう」
女が言い終えると同時に、触手の槍が虎造の腹部を刺し貫いた。
「がっ!!」
虎造が大量に吐血する。
しかし。
虎造の眼は、まだ燃えていた。
「くそったれが…」
血を吐きながら虎造が言った。
「どうあったって、そのすかした顔に、このげんこつを一発ぶち込んでやらなけりゃ、気が済まねぇ…」
「はっ」
女が笑った。
「まだ死なぬとは呆れた頑丈さよ。血を吸って、わらわの僕としてやっても良いな」
女が口を開き、二本の犬歯をむき出した。
突然。
空気が変わった。
女が瞬時に、虎造を捕らえていた触手を体内に戻す。
虎造が地面に落ちる。
女は虎造を無視して、素早く背後を振り返った。