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「虎っ!!」
連れ合いを呼ぶ。
「死ぬんじゃねぇぞ!!」
お龍の瞳は潤んでいた。
「あたぼうよ」
虎造が頷く。
お龍が踵を返した。
「わらわから逃げられると思うておるのか?」
黒衣の女が、一歩前に出た。
「させねぇっ!!」
虎造が跳ぶ。
右拳を後ろへ振りかぶり、女へと向かっていく。
「おおおおっ!!」
虎造が吼える。
その姿はまさに大型の肉食獣、虎だ。
「寄るでない、下郎めが」
女が言った。
両手のひらを虎造に向ける。
瞬間。
女の手のひらから無数の細い触手のようなものが飛び出した。
触手は四方に拡がり、空中の虎造の四肢へと突き刺さった。
「ぐっ!!」
虎造が、うめく。
一見、細く頼りなげな触手たちは恐ろしいほどの強力さで、虎造の巨体を宙に磔にし、完全に動きを封じた。
「わらわの身体は九割が血管で出来ておる。そして自在に操れるのじゃ」
女が言った。
虎造の苦悶の声に、逃げかけたお龍の足が思わず止まり、振り向く。