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両手を前に出し、ふらふらと歩いている。
男女たちが虚ろな眼差しで、虎造とお龍を見つめた。
途端に眼球が激しく動きだす。
「がーーーっ!!」
一斉に男女たちが叫んだ。
口を開いたことで、全員の恐ろしく伸びた犬歯が、はっきりと見えた。
振り上げた両手の爪も、まるで獣のように鋭い。
前方の五人と後ろの五人が、虎造とお龍に向かって突進した。
「おらっ!」
気合いと共に虎造が、その太い右脚で先頭の男の腹を正面から蹴った。
爪が虎造に届く前に、男が後方へと吹っ飛んでいく。
先頭の男は後ろに居る四人にぶつかり、全員がひっくり返った。
お龍に襲いかかった五人の爪は全て空を切った。
お龍は巧みに身体を回転させ、攻撃をかわしつつ、後ろ回し蹴りを放った。
男が衝撃で倒れる。
お龍の回転は、そこで止まらない。
回り続けては引き締まった脚で蹴りを繰り出し、残りの四人も打ち倒した。
「なめんじゃねえぞ!!」
お龍が怒鳴った。




