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「早く宿に入ろうぜ」
お龍が続けた。
「おう」と虎造が答える。
二人が宿を吟味しようとしたところで。
「おい」
まず、異変に気づいたのは虎造だった。
「妙だぞ」
ついさっきまで天気は良く、夜空に浮かぶ星がはっきりと見えたというのに、突然、発生した霧があっという間に辺りを覆い尽くしていた。
「こいつはいったい?」
お龍が言った。
周りを見回すが、すでに近くに立つ虎造しか見えないほどの濃霧だ。
「気をつけろ!」
虎造が声を張った。
「何か来るぞ!」
霧の向こうに、うっすらと人影が見えた。
「こっちもだぜ!」
背後を振り向き、お龍が言った。
二人は何者かに挟まれていた。
霧の中から、影がゆっくりと二人に向かってくる。
そして、その姿を現した。
人だった。
前方に五人、後ろに五人。
男が八人、女が二人。
しかし。
「こいつら様子がおかしいぞ!」
虎造が言った。
その男女たちは皆、死人のように肌色が悪かった。




