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日向の瞳に暗い色が差した。
「穴は埋まらないの」
日向の言葉に無法丸は両眼を閉じた。
「私が魔剣を完成したら、この穴は埋まるのかな?」
無法丸は眼を閉じたまま、首を横に振った。
「俺には分からない」
「魔剣には私のあなたへの想いを込めるわ。そして私の名前と」
日向が、いたずらっぽく笑った。
「名前?」と無法丸。
「そう。いつもそばで、あなたを照らし続けるの」
日向が無法丸の胸から顔を離した。
顔を無法丸のそれに近づける。
日向の唇が無法丸の唇に重なった。
無法丸の眼が開いた。
夢だった。
また、日向の夢を見たのだ。
優とトワを伴い、襲われた村を出発し、最初に訪れた宿場町の宿のひと部屋に無法丸たちは泊まっていた。
やや広めの部屋の中は真っ暗で、まだ夜が明けていないと分かった。
右隣には優とトワがそれぞれ布団で、微かな寝息を立てている。
そして無法丸の唇には夢の中の日向の唇と同じように女の唇が重ねられていた。
無法丸は顔を動かし、自分に口づけしている女の顔を見た。
猫のように大きな、艶やかな瞳で無法丸を見つめている。
縫であった。
元々、だらしなく着ていた着物が、さらに乱れ、やや小ぶりの形の良い乳房が、ぎりぎりのところまで顔を出している。




