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「一から自分の人生を始めてみるつもりだ。縫の墓参りもしないとな」
優とトワは何も言えなくなった。
二人が無法丸に抱きついて泣きだす。
「おいおい、困ったな」
無法丸が、ため息をついた。
再び出現した揺らぎの扉から顔を出した無法丸を見て、ターシャが「あ! 帰って来た!」と言った。
眼鏡と踊り衣装姿に戻っている。
トワの星は当然、夜だったが、こちらの世界はすでに朝日が昇っていた。
ターシャが、たった一人で祭壇の側に立っている。
「あれだけの数を一人で倒したのか?」
無法丸が感心した。
「いえいえ! 朝日に照らされたら、みんな粉々になっちゃいました」とターシャ。
「あの怪物は、どうなりました?」
ターシャが訊いた。
「ああ、何とか片づいた」
無法丸の言葉にターシャが両手を上げ、喜ぶ。
「やったー!! 良かったです。これで私の始末書にも意味があるというもの…」
喜んだ直後に、ターシャが半べそをかく。
「よく分からないが、お前もいろいろ大変そうだな」
無法丸がターシャの肩を叩く。
「はい、上司がうるさくて。激務なのにお給料もそんなに良くないし」
「そ、そうか…」
無法丸は苦笑いした。
「だが、お前の加勢は本当に助かった。一生、恩に着る」
ターシャが照れる。
「ありがとうございます!!」




