145
「お前たちは自分たちの生活の便利さのために、トワを危険な目に遭わせたのか?」
無法丸は、むっとなった。
「違います、無法丸さん」
トワが言った。
「僕は自分で志願しました。僕が持ち帰るエネルギーで、この星の大勢の人たちが救われるからです。飢えや病気で亡くなってしまう人を助けたかったので」
トワの真っ直ぐな眼差しを見て、無法丸は頷いた。
「さすが、優が惚れるだけのことはあるな。お前も、しっかりと腹が据わってる」
無法丸と優とトワは笑い合った。
「さてと」
無法丸が言った。
「もう一度、あのゆらゆらした扉を開けてくれよ。俺は帰らないとな」
「無法丸さん」
優が言った。
「俺といっしょに、ここに残りませんか?」
トワも強く頷く。
「僕たちは無法丸さんを歓迎します」
無法丸は首を横に振った。
「ここは、お前たちの場所だ」
優とトワの肩に、無法丸が手を置いた。
「お前たちが考え、見つけ、ここにたどり着いた。お前たちの選んだ場所なんだ。俺は今まで」
無法丸は眼を閉じた。
「自分のことは何も考えなかった。他人の事情に乗っかるだけだ。日向や縫、そしてお前たちに出逢って、俺もやっと自分ってやつを真剣に考える気持ちになれたのさ。俺はあっちに戻って」
無法丸が、顎で蜃気楼のあった場所を指す。




