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人、一人がぎりぎり通れるか通れないか。
無法丸は走りだした。
猛然と疾走する。
ターシャの攻撃を逃れた吸血鬼数人が無法丸に飛びかかったが、全て黒鞘の餌食となった。
無法丸は青く光る蜃気楼へと跳んだ。
転がり込む。
揺らぎに触れると冷たい感触だった。
身体が蜃気楼の先に出る。
無法丸の背後で揺らぎが閉ざされ、消失した。
そこには蜃気楼に入る前に見えた、曲線ばかりで形作られた奇妙な建物が並んでいた。
トワと似た容姿の人々が周りを囲んでいる。
優とトワが無法丸のそばに居た。
そして、やや離れた場所に。
触手を身体に収めた全裸のカーミラが、背中を向けて立っていた。
天空に浮かぶ月が青白い光をその裸身に浴びせ、白く美しい肌を際立たせた。
「あはははは!!」
カーミラが天を仰ぎ、笑った。
「太陽」という呪いから完全に解放された歓喜の表情であった。
「やった!! ついにやったぞ!!」
カーミラが無法丸へと振り返った。




