138/147
138
「これは完全に規定違反なんですよ」
ターシャが言った。
兜の中の瞳は涙目だ。
「始末書を何枚も書かないといけないと思います。『時間管理局』としてはトワさんが、この時間軸から居なくなりさえすれば良いので…これは余計な行動…」
無法丸にはターシャが何を言っているのか全く分からなかった。
「でも」
ターシャが、かっと眼を見開いた。
「あの怪物をあちらの世界に行かせるのは、何だか嫌なんです!! すごく悪いことが起こると思います!! だから私は今、自分が出来る精一杯…」
ターシャが無法丸に頷いて見せる。
「あなたを助けて、向こうの世界へ行かせます!」
言い終わるなり、ターシャの銀色の身体が吸血鬼たちに突進した。
ターシャが手刀、拳打、蹴りの流れるような動きで前方を切り開く。
無法丸は無心になった。
ターシャが何者で、何を言っているかは分からない。
しかし今、道は開いている。
カーミラの消えた揺らぎは、さらに小さくなっていた。




