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トワが頷く。
「思い出しました」
トワは石造りの祭壇の寝台のような平面に両手をついた。
そして祭壇の上に横たわった。
優が心配そうに見守る。
無法丸は辺りに油断なく視線を走らせた。
周りは岩場で、入ってきた以外に道は無い。
祭壇に横たわるトワが、ぶつぶつと何かを呟く。
それは無法丸と優が今まで聞いたこともない不思議な抑揚を持つ、意味不明な言葉だった。
トワの両眼が青く輝き始めた。
澄んだ温かい光。
無法丸と優は異変に気づいた。
トワの居る祭壇の後方の空間が、蜃気楼の如く揺らぐ。
揺らぎはどんどん大きくなり、無法丸の背丈の倍ほどの高さになった。
横幅は祭壇よりも長い。
そして。
蜃気楼の中から、トワの瞳と同じ青く優しい光が差し込んできた。
「何だ、これは!?」
無法丸が驚く。
蜃気楼の向こうには複数の建物が見える。
無法丸が見たことのない、やたらと曲線の多い不思議な形だ。
ぼんやりとした人影も見える。




