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星繋ぎ  作者: もんじろう
131/147

131

 その口は真一文字に結ばれ、顔は紙のように白かったが、涙はこぼさなかった。


 ただ、瞳を閉じた縫の顔をじっと見つめていた。


 無法丸たちの背後では、美剣の遺体に被さり号泣している刀吉と、その側に立つ楽法が居た。


 刀吉は涙を拭った。


 鼻水は、そのままだ。


「美剣様、帰るだーよ」


 刀吉は小さな身体を這わせ、美剣の遺体の下へと潜り込んだ。


 そして、自分の何倍もの体躯(たいく)を持つ、しかも重い具足を着けた美剣を「えいや!」と一気に持ち上げた。


 尋常(じんじょう)ではない怪力であった。


「ほい、ほい!」


 かけ声と共に刀吉が美剣の遺体を担ぎ、走りだす。


 無法丸たちとは反対側の野道の先へと消えていった。


「無法丸」


 楽法が言った。


「我らを退(しりぞ)けたとて、将軍家は諦めぬ。また別の猛者(もさ)が現れる。今からでも遅くない。『星の子』を私にお渡しなさい」


 黙って縫の顔を見つめていた無法丸が口を開いた。


「それ以上、喋ったら」


 無法丸から、すさまじい殺気が自分に向けられているのを感じ、楽法はぞっとなった。


「女だろうと何だろうと、お前を殺す」


 楽法は悔しげに唇を噛み、刀吉が消えた道へと去っていった。


 無法丸と泣きじゃくる二人の少年は、しばらくその場に留まっていたが、やがて立ち上がり歩きだした。

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