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そして、ついに。
龍虎の身体が煙を発した。
「死ぬがよい、この下等生物めが!!」
まだ治りきらぬ、血まみれのひどい面相でカーミラが罵倒した。
自らは朝日を浴びない位置にまで退がっている。
「どうやら、ここまでだな」
虎造が言った。
不思議と、さっぱりとした口調だった。
「ああ」
お龍が答える。
「まあ、あの女の顔をひどい面にしてやれたから良しとしようぜ」と、お龍。
「そうだな」
虎造が言った。
「龍」
「何だよ」
「ありがとうな」
「それはこっちの台詞だぜ」
龍虎が、にやりと笑った。
次の瞬間。
龍虎の全身は土くれと化し、粉々に崩れた。
二人は死んだ。
「はははははは!!」
朝日の差し込まぬ洞窟の奥へと退がりながら、カーミラは笑った。
「勝った! わらわの勝ちじゃ! どうじゃ、詩音! わらわが勝ったぞ!!」
洞窟の中、勝ち誇る笑い声が、いつまでもいつまでも響き渡った。
無法丸と優とトワは、こぢんまりとした寺に縫の遺体を預け、再び旅立った。
あの夜、死んだ縫を抱いた無法丸に優とトワが駆け寄り、泣きに泣いた。
短い付き合いではあったが、少年二人は縫が好きだった。
飄飄として掴みどころがなく、軽口を叩き、皮肉めいたことを言っても結局は優しい女、縫が好きだった。
無法丸は泣かなかった。




