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あらゆるものを瞬時に縛りつける技を持つ自分が、閉鎖的な里の慣習に縛られるとは、何とも皮肉な思いがした。
縫は、ずっと不満を抱えたまま、里での生活を続けた。
縫が十六になった頃、野盗たちが里へと攻め込んできた。
二十人ほどの野盗は、縫の魔糸の技によって撃退された。
縫は己の技が外の世界でも通用すると実感した。
縫の両親を含む指導者たちは里を放棄し、別の場所へ移住すると決めた。
争いを避けるためだ。
縫はまた、納得がいかなかった。
何も非がない自分たちが、ここまで発展させた里を何故、捨てなければならないのか?
指導者たちは野盗撃退の噂を聞いた領主の軍勢がやって来るかもしれないと言うが、そのときはそれを倒せば良いのではないか?
何か起こる度に住処を変えるなど、臆病者のすることでは?
それで生きていると言えるのだろうか?
里の外へ出て、自由にものを見て、聞いて、体験したい。
たとえ、その過程で危険に遭遇し、死んだとしても、それは自分の人生を生きたという証ではないか?
縫は、そう考えた。
ずっと押さえつけていた想いに火がつくと、もはや消すことは出来ない。
他の者たちが里から移動する道中で、縫は姿を消した。
たった独りきりの新しい人生の始まりだった。
縫は諸国を歩き、見聞を広めた。




