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「女っ!!」
美剣が大喝した。
「剣士同士の一騎討ちを邪魔をするとは許さぬっ!!」
美剣の瞳が怒りに燃えた。
縫が無法丸に微笑む。
縫の糸が無法丸の身体に絡みつき、上方へと投げた。
その直後。
美剣の斬撃が、縫の右肩から左腰にかけて斜め一直線に両断した。
縫は特殊な糸を自在に操る魔糸使いの一族として生まれた。
一族は以前は将軍家に使えた時期もあったが、政治的な争いに敗れ、山奥の隠れ里で細々と暮らしていた。
もはや、世の表舞台に立つ野望などない一族は、それでも魔糸の技だけは伝承した。
縫は天才的な才能を発揮し、里一番の魔糸使いへと成長した。
縫は素晴らしい力を持ちながら、里から外の世界へ出ようとせぬ一族に疑問を感じた。
外の世界を自由に旅してみたいと思った。
縫は、その思いを両親に告げた。
両親は里の指導的要職についていた。
当然、縫の提案は激しく諌められた。
縫は納得いかなかった。




