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勝利への一撃は、もはや封じられた。
美剣の返す刀は無法丸を両断するだろう。
こうなっては、縫と優とトワの無事を願うのみだ。
楽法に追われたとしても、片手が折れた敵ならば、縫が何とかしてくれる。
心配なのは美剣とカーミラに追いつかれたときだが。
(縫…すまない)
まるで無法丸の心の声が聞こえたかのように、背後からするりと縫の顔が出てくるのが見えた。
(な!?)
無法丸は唖然とした。
幻ではない。
縫が、いつもの隠形の術を使って、影の如く無法丸の後ろに隠れていたのだ。
無法丸とまったく同じ跳躍で背後に貼りつき、今、その姿を現した。
驚く無法丸を尻目に、縫の両手から銀色の糸が疾った。
「魔糸繋ぎ」
縫が言った。
切断された無法丸の右腕が一瞬にして繋がれた。
皮膚も筋肉も血管も全てが元通りに縫い合わされる。
途切れていた気の流れも復活した。
縫が無法丸と美剣の間へと身体を入れる。
無法丸と縫が見つめ合う。




