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「虎、子供みたいな顔してるぜ」
「龍」
虎造の顔が真剣になった。
「お前を守ってやれなくて、済まなかった。それに俺の意地の張り合いにまで付き合わせちまって」
「あはは!」
お龍が笑った。
「今さら謝るんじゃねえよ! こちとら契った時から、たとえ地獄の底だってついていくと決めてるんだぜ! そんな顔してんじゃねえ! 気合い入れろ、気合い!」
「龍」
虎造が、にやりと笑った。
「ぶちかますぞっ!!」
虎造が吼える。
「おうよっ!!」
お龍が答える。
虎造がお龍の腰に手を伸ばし、荒々しく抱き寄せた。
二人が激しい口づけを交わす。
そして、お互いの首筋に噛みついた。
丘の上から様子を見ていたカーミラが顔をしかめる。
「何と汚ならしい」
吐き捨てた。
虎造とお龍の血液が二人の身体を駆け巡る。
夫婦の双眸が青く輝いた。
カーミラへと向かって丘を登ってくるのは、もう二人ではない。
たったひとつの影。
龍虎。




