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龍虎との戦いで破れたドレスは新調されている。
月明かりがカーミラの黄金色の髪をきらきらと輝かせた。
カーミラは二人の剣士の戦いを注視していた。
(人とは思えぬほどの気迫…)
カーミラは美剣へと目をやった。
(おそらくは、あの男が勝つ。『星の子』を奪うには厄介な相手よな)
苦々しく思った。
(しかし、それよりもまずは…)
背後に気配を感じた。
振り返る。
丘を登ってくる二つの影。
一組の男女だ。
虎造とお龍である。
「虎」
お龍が言った。
「やたらと人の血が飲みたくなってる」
「ああ」
虎造が頷く。
「俺たちも化け物になっちまってるのかもな」
「どうする?」
「人の血を吸って生きるぐらいなら、すっぱりあの世へ行くさ」
虎造が微笑んだ。
「そうだね」と、お龍。
「それじゃあ、こいつが最後の喧嘩ってことか」
「ああ、そうだ」と虎造。
右の拳を左の手のひらに、ぱーんと当てた。
「あの女の顔に必ず、この拳を叩き込んでやる」
「ふふふ」
お龍が笑った。




