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宿場や町に泊まっては、また人々を巻き込んだ戦いになるかもしれず、それは避けた。
優は一度眼を覚まし、トワを喜ばせたが、ウロコ衆とターシャと連戦した影響か、すぐに眠りについた。
トワは優のそばを離れず、熱心にその寝顔を見つめ、そのうちに自分も寝てしまった。
二人は仲良く抱き合って眠っている。
それを微笑みつつ見つめていた無法丸も、いつしか眠っていたようだ。
小屋の窓からは柔らかな月明かりが差し込んでいる。
「縫」
無法丸が、座って寝ていた自分の身体に密着している縫に呼びかけた。
「何だい?」
縫が答える。
「俺はお前を抱かない。俺には」
そこまで言った無法丸の口に、縫が細い人差し指を当てた。
「しー」
縫が囁く。
「他の女が気になるなんて言うんじゃないだろうね?」
くすりと笑った。
「おおかた、その刀に関係ある女」
無法丸の刀を指す。
言い当てられた無法丸は、思わず黙った。
「あんたは泣いてるように見えるときがある」




