109/147
109
天才的な剣術の技が、どんな窮地からも無法丸を救った。
数多の戦いが無法丸を歴戦の勇士へと成長させた。
十年が過ぎた。
心の穴は依然として存在していた。
ずっと無視していたが、穴は時に激しく痛み、血を流しているように感じた。
そんなときはただただ耐え、痛みが治まるのを待った。
剣の腕前で金を稼ぎつつ旅する途中で、無法丸は一人の女と出逢った。
魔力を帯びた刀を打つ、魔剣鍛冶の日向である。
日向も孤児だった。
二人は出逢ってすぐに急速に惹かれ合った。
二人が愛し合うのに、そう時間はかからなかった。
二人は鍛冶場と併設された小屋で共に暮らし始めた。
無法丸は剣術で稼ぎ、日向は納得がいく魔剣の完成を模索しながら普通の刀剣も打ち、それを売って日々を過ごした。
二人は共に心の穴を感じ、日向は自らが魔剣を完成させれば、それが埋まるのではないかと考えていた。
無法丸は、そうなれば良いと思った。
そして、日向の側に居ると決めた。




