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縫が糸を持ったまま、倒れている優の様子を確かめる。
「大丈夫、気を失ってるだけだよ」
心配そうなトワの肩に手を置いて、落ち着かせた。
トワが胸を撫で下ろす。
「縫、放してやれ」
無法丸の言葉に、縫は片眉を上げた。
「無法丸!! 本気で言ってんの!? 敵は一人でも減らしておこうよ!」
縫が口を尖らせる。
「縫」
無法丸が言った。
「これじゃあ、命がいくつあっても足りないよ!」
縫がターシャから糸を外し、掌中へと戻した。
「私を逃がして良いのですか?」
ターシャが訊いた。
複雑な表情を浮かべている。
「私はまた、トワさんを狙いますよ」
「そのときは俺がトワを守る」
無法丸が言った。
後ろで縫が肩をすくめる。
ターシャが、ゆっくりと後方へと退がり始めた。
左手首の帯を操作する。
ターシャの姿が突然、消えた。
「何だい!?」
縫が驚く。
無法丸が両眼を凝らす。
ターシャの気配は感じられた。
それが遠ざかっていく。




