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女はミランダに血を吸われ、吸血鬼となっていた。
名を詩音という。
詩音は、まれに起こる突然変異的な能力の高さを発揮した。
その実力はカーミラやミランダと並ぶほどであった。
詩音の強さにカーミラの誇りは傷つき、自然、詩音との折り合いも悪くなった。
詩音もミランダと同じく、人の血を吸うのを嫌がった。
ミランダのそれよりも詩音はさらに上をいき、吸血欲求自体を呪いと考えていた。
詩音は古い文献を読み漁り、魔力を秘めた一輪の華の存在を突き止めた。
その華は人間の血液と同じ成分の蜜を出し、けして枯れることがないという。
詩音はミランダに許しを得て、その華を探す旅に出た。
カーミラにしてみれば、血を吸い自らの糧とせざるを得ない必然的な部分とは別に、楽しみとしての人間狩りを放棄するなど、理解できない馬鹿げた行為であった。
やはり、詩音とは馬が合わない。
それから五十年が経った。
突然、ミランダがカーミラの隠していた人間の虐殺を咎めた。