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陛下の気持ち 5

ブックマークと評価をありがとうございます♪

やっと「陛下の気持ち」完結です

「姫、明日は結婚式だな」


結婚式前夜。いつもより早く二人共ベットに入った。

いつものように姫を抱きしめ横になっている。


「そうですわね。緊張してしまいそうですわ……」


「特に難しい事は無い。姫なら大丈夫だ、王妃らしく出来る」


姫の髪を撫でて言う。


「頑張ります」


姫は笑顔で言った。

姫と一緒の寝室で過ごして一か月。

姫の笑顔は「想い出のままの微笑み」の方が圧倒的に多い。


「……ところで姫。姫はどうして私を選んでくれたんだ?」


姫に確認したい事があった。

少し婉曲に聞く。


姫は不思議そうな顔をした後、無邪気な笑顔で言った。


「陛下がとても、お優しい方だったからです」


姫はこの一か月「陛下は、お優しいですね」と、良く言ってくれた。

本当に些細な事でも。


「……だが、優しいというなら王太子の方だと思うが?」


第三者に問えば、王太子と私なら彼の方を優しいと判断するだろう。それは姫も知っている。私の些細な行動を優しいと思える姫。

どう答えるだろうか? 

姫の表情を注意深く見つめた。


「……いいえ。陛下の方が何倍も優しいです」


姫は真剣な顔で言った。

やはり、王太子は世間の評判とは違うと気づいているのか。


「どうして、そう思うのだ?」


「……だって、私の指の怪我は陛下だけが気づいて下さいました」


少しの間の後、姫は「()()()()()()()()」で、言った。


「そうか。姫は、いつどこで怪我をしてしまったのだ?」


「……私の不注意です。お気になさらないで」


また、姫は「王女としての笑み」だ。

しかも、答えになってない言い方で。


「どんなだ?」


「本当に私の単純な不注意なのです。恥ずかしいので、お聞きにならないで」


やはり「王女としての笑み」で、答えるのを拒絶した。


「そうか」


姫は本当の事を言う気は無いのだろう。

明日は王太子が結婚式に来る。

波風を立てたくないのだろうな。


姫の受け答えを聞いて、怪我は王太子が原因だと確信した。

だが、姫はその事を隠そうとしている。

姫は、やはり三か国の友好を壊したくないのだろう。


姫の答えによっては王太子に釘を刺そうと思ったが……。


それを姫は望んでいない。

ならば、気づかないフリをするのがいいか。


「姫。明日の為に寝ようか。おやすみ」


「はい。おやすみなさい、陛下」


いつも通り、姫の頭を撫でた。

姫も目をつぶる。

こんな清らかな夜も今日で終わりか。


おかしな話だが、惜しいように思えた。

充分な幸せを貰っているせいだろうか?

それとも、姫があまりにも純粋で無垢で美しいからだろうか?


そんな事を思いながら眠りについた。





____結婚式当日


姫の母上が心配していた花嫁衣装はとても素晴らしい仕上がりだった。

さらに着ている姫も天使の様に美しい。大袈裟ではなく姫の花嫁姿は語り継がれるのではないかと思うほどだ。

結婚式もそれに見合う豪華な式を準備出来た。


世界で一番美しい姫は私の妻。

ただでさえ口付けをしたくなるが、今日はそれが推奨される特別な日だ。


私は遠慮なく姫を抱きしめ口付けた。

それを見た国民は歓声を上げる。3年も王妃がいなかった分、国民の喜びをひしひしと感じる。

しかも王妃である姫は、冷酷無比な(おう)が寵愛するのも納得な神々しい美しさなのだから。

とんでもない噂も国民の不安もあっただろうが、今日で全て払拭されるだろう。


姫も王妃らしい態度だ。本当に一生懸命に王妃らしくしている。だが、完璧な中に本物の照れが見える。

それが健気で、堪らなく愛おしくて口付けが止まらない。


結婚式とは良い物だな、苦労した甲斐がある。

愛しい姫に思う存分口付け出来て、それが国民の安心と喜びに繋がる。

さらに、姫の国との強い絆になり両国の強化にもなる。姫の立場を国内外で不動のものにも出来る。


そして、なにより……。

幸せだ。それ以外の言葉がでない程に。




____宴が始まる


ここでも姫への寵愛を示すべく、敢えて長椅子を用意して貰った。

姫を皆の前で堂々と愛でられるのは今日だけだ。そして、姫も私の寵愛がどういう意味を持つか理解している。姫は恥ずかしいだろうが許してくれるだろう。


私達の元にまず、姫の兄上3人が祝いの言葉をくれた。

姫の父上である国王は体調を崩したらしく、その事を苦笑しつつ報告してくれた。そして、素晴らしい結婚式で感動した。自分達の最愛の妹は、この国でも大切に愛されている。両国の未来は明るいと心からお祝いをしてくれた。


そして、隣国の王太子もお祝いを言う。


「国王陛下、王妃殿下、本日は誠におめでとうございます。お二人共輝くばかりにお美しい。恐れ多い事ですが、特に王女殿下の余りの美しさに叶わなかった夢を思い出してしまいました」


……最初の言葉は常識的だが。


「今日は良く来てくれた。礼を言う」


私と王太子が姫に求婚した事実は多くの者が知っている。後半の言葉には反応せず流した方が大国の王らしいか。


「せっかくのお祝いの席です。王妃殿下、私に殿下と踊る名誉をお与えください」


王太子は「天使の笑み」で、姫を誘う。


「ええ、もちろん喜んで」


姫は「()()としての笑み」で、答えた。


前回は姫を手に入れる目的があって怪我をさせたのだろう。今回は私達の結婚式だ。怪我をさせる理由など全くない。

姫と王太子は優雅に踊り、無事にダンスは終了したように見えた。


「姫!! 僕とも踊って下さい!!」


あの時の美少年が姫をダンスに誘った。まだ、王太子がいるのに。

少し無作法だな。


すると姫は前回の様に痛みを訴える表情を一瞬した。

まさか……。


「あっ!! 姫、指を怪我されていますよ!! これは指輪の痕!! 王太子殿下!! ヒドイです!!」


美少年は殊更大きい声で言った。

そして、分かりやすく治癒魔法を使う仕草をした。


「姫……お可哀想に……」


美少年は涙目で言う。周りがザワつき始めた。


「王太子殿下……残念です。殿下はお優しい方だと信じておりましたのに」


宰相の令息がつづく。


「王妃殿下、もしかして私の指輪が()()()()当たっていたのですか? 申し訳ありません、お優しい殿下は私に気づかせないようにして下さったのですね」


「ええ。前回もそうだったのですが、王太子殿下の指輪が当たってしまって……。ですが、故意ではないと私は分かっておりますので、どうかお気になさらずに」


やはり、前回の姫の怪我は王太子だった……。

しかも、私の王妃となった姫に再び……。

ギリッと歯を噛み締め席を立った。


「姫……お優しい。姫は昔からお優しいですね……」


「……そうですね。王妃殿下がそう言うなら……王妃殿下の仰る通りです。王太子殿下、申し訳ありませんでした」


「いえ、私こそ王妃殿下の優しさに気づかず……とんでもない失態を。王妃殿下お許しください」


「もちろんですわ。どうか王太子殿下、今日の宴を楽しんでらして」


美少年と宰相の令息と王太子が言い、姫は「王妃としての笑み」で、許した。

だが、私は許すつもりはない。


「王太子殿下。踊られる時は指輪を外したらどうだ? 流石に三回目があれば私も黙っていられない」


私は自分の武器を使って王太子に冷淡に言った。

皆の緊張が分かった。


「……申し訳ありません。ご忠告痛み入ります」


困った様な笑みをする王太子。

だが、私が冷たくした空気は変わらない。

私が武器を振りかざした後に、いつもの自分の武器が通用すると思ったか。


「今までは偶然だったろうが、次からは故意では?と、思われる。殿下は気をつけるべきだろうな」


次があれば我が国への宣戦布告とみなす。

私の裏の言葉は皆が分かっただろう。

流石の王太子も理解したようで悪あがきはせず礼をして去った。


「姫!! 僕と踊って下さい!!」


「ええ」


不穏な空気を天使のような二人が変えてくれる。

初々しい少年のリードに優雅に合わせる姫のダンスに皆魅せられている。


「宰相殿のご令息だったな」


私は声をかけた。


「はい。本日はご成婚、誠におめでとうございます」


「ありがとう。あの少年にもお礼を伝えて欲しい」


彼らの行動は、王太子とその側近に危機感を与えただろう。

多くの人の前だったからこそ、国家として今日の出来事を真剣に考慮せざるを得ない。


「……はい」


「貴方達は姫を守ってきたのか? 今日の様に?」


彼らが一番に守りたかったのは姫だろう。


「……いえ。恥ずかしながら、姫を…王妃殿下をお守りしたのは今日が最初で最後です」


意外な言葉だった。

しかも、彼は謙遜ではなく本当に恥じているように見えた。


「そうか? 王太子の誕生祝いの宴の時も姫を守っていたではないか」


「……では、今日で二回目です」


「そうか、ありがとう。これからは私が姫を守って行く。今日の様に。だから安心して欲しい」


「そのお言葉を聞けた事。私達にとって……我が国にとって何ものにも代えられぬほど至極の喜びでございます」


彼はそう言うと、美少年と踊り終わった姫の元に行った。彼と姫のダンスはとても息が合っていた。


「王妃、私とも踊って下さい」


私も姫にダンスを申し込む。


「ええ、もちろんですわ」


姫は3曲連続でトータル5回目のダンスだ。

いつも以上に姫の負担にならないようにリードした。


「陛下……王太子殿下にあんなにハッキリと言ってしまって良かったのですか?」


姫は疲れも見せず質問をする。


「ああ」


姫は自分さえ我慢すれば穏便に済む。そう判断したのだろう。


「ですが、友好の為にはあそこまで言う必要は無かったのでは?」


彼は一線を越えた。

目的が無い今回の怪我は彼の私怨によるものだろう。

それを見逃せば、姫と王太子の間に見えない上下関係とトラウマが生まれてしまう。それは阻止するべきだ。


それに……。


「私は姫を守ると言っただろう?」


今日も姫が怪我をさせられたと知った瞬間。姫の思いを尊重させ、王太子に釘を刺さなかった事を私は後悔した。

私が前回の姫の怪我の真相を知っていると匂わせれば彼は姫に手を出さなかったはずだ。


だからこそ、もう二度と彼が姫に蛮行を行えないようにした。


「それに牽制も必要だ。脅しを周囲に見せるのも大国の王として必要なのだ。気にするな」


これも本当だ。

姫への寵愛は姫を守る為でもあった。

それを無視して姫に無礼を働けばどうなるか。

この場にいた人間は全員理解したはずだ。

結婚式は和やかな空気だった。私もいつもとは違って見えただろう。

だが、私は冷酷無比な王であり、この国は軍事大国なのだ。それを思い出させるのは落差がある分、忘れられない記憶として皆の頭に残るだろう。


「……陛下」


「姫の優しさと我慢強さは美徳だが……私に頼れ、きっと守る」


「……」


「もちろん、姫の様な外交も確実に必要だ。その時は姫に任せる」


姫の笑顔や優しさ。これを武器にした外交は私には無理だ。

私とは真逆だからこそ姫の力が必要になる時がきっとくる。


「陛下、貴方が私の夫で私は本当に幸せ者です」


私の言いたいことが分かったのか、姫は胸に迫ったように私に言う。


「私もだ」


私は5年も姫に支えられ、婚約してからは毎日幸せを貰っている。

姫も幸せと言ってくれた……これ以上の幸せはあるだろうか。

愛しい姫に私は自然と微笑んだ。


「陛下……」


姫は私を切なげに見つめ……唇を差し出す仕草をする。

……初めて姫が口付けをせがんでいる。

喜びと愛しさが溢れ、踊りを止め姫に口付ける。

姫に求められてする口付けはとても甘く痺れた。


唇を離すと、姫の目は潤み頬も赤い。なのに、いつものように恥ずかしそうにうつむく事は無い。

真っすぐに私を熱い眼差しで見つめている。


「……姫」


姫は私を見つめるのを止めない。むしろ「もっと」と、無言でせがんでいるように見える。

このままでは、私も色々な感情や情熱が溢れてしまう。


「ここは目立つな」


ここよりは先程まで座っていた場所の方が色々とごまかせるだろう。

姫を横抱きにして長椅子まで戻った。


座るとすぐ、姫は私に抱きつく。

そして、先程よりもっと直接的に口付けをねだってきた。


「……陛下……」


先程より甘い声で姫が呼ぶ。


「……」


早く口付けして? と、全身で訴えかける姫は余りにも扇情的過ぎた。


「……姫」


この状況で口付けしてしまったら……。

結婚式だからこそ、する訳にはいかない。


「陛下?」


姫の望みを叶えない私に、姫は初めて見せる表情をした。

まるで失恋でもしたような悲しげな顔だった。


「……姫、そんな顔をしてはいけない」


……そんな顔をするなと、抱きしめて口付けて「愛している」と、組み敷きたくなる。


「流石に、これ以上は駄目だ」


自分を制御するために姫を抱きしめた。

これ以上、姫の顔を見ていたら正気ではいられない。


「陛下……好きです。陛下がとても……」


姫の告白にドクンと胸が高鳴る……。

姫……こんな時に言うのか?


「……駄目だと言ったのに」


「どうして?」


「……姫。今の貴女は……」


初めての情熱を私にぶつけ過ぎだ。

落ち着く為に一呼吸置いて、姫を抱きしめ頭を撫でた。


「……姫。貴女が私をやっと求めてくれた、それは嬉しい。だが……」


受け入れられているだけで充分に満足していた。

初々しい姫も、照れてる姫も本当に愛おしかった。

だが、実際に求められ好きだと言われると……。

嬉しさと共に、今までの比では無い愛しさと情熱が込み上げる。


だからこそ……。


「もう少し後にして欲しかった」


切実にそう思い苦笑してしまった。

姫の初めての情熱は、私に初めての激しい劣情を与えてしまっているから。


「後?」


「二人っきりになったらという事だ」


姫の純粋な疑問に答える。

私は不純な自分を誤魔化すように姫の頭を撫で続けた。


「陛下は私が嫌がる事はしないと言いましたが、して欲しい事もしないのですか?」


姫が私を責めるように言う。

こんな姫も初めてだ。


「姫……」


「先程までは……あんなに……してくれたのに……」


姫の表情に煽られない様に抱きしめていたが、それでも分かる涙声だった。


「姫、泣いているのか?」


「……」


姫は顔を横に振るが……。


「……姫」


姫の名を呼び、姫の顔を見た。

涙はこぼれて無いが、今にも泣き出しそうな顔だった。

こんな顔を見てしまっては……。

思わず口付けた。


「陛下……」


「姫の想いに答える。だから泣くな」


姫……。

誰よりも愛している、だから泣かないでくれ……あやすように姫に軽く何度も口付ける。なだめるように頬を撫でながら。


なのに……口付ける度に姫の表情が予想外に変わる。

蕩けたように瞳を潤ませ、悩ましげに私の口付けをねだる。

私の口付けで姫がこんな風に……いつもより軽い口付けなのに頭がクラクラとする。


「……陛下……」


姫が熱い吐息で私を甘く切なく呼ぶ。

ここが寝所なら間違いなく押し倒している。


「……姫……。姫を泣かせたくないし、姫のして欲しい事をしてあげたいのだが……」


流石に私の理性も限界だ。


「……陛下……もしかして、どこかお辛いのですか?」


「……すまない」


「いえ、私こそ陛下の体調に気づかないなんて……大丈夫ですか?」


初心な姫は体調が悪いと思っているらしい。


「姫。今は……抱きしめるだけで許して貰えるか?」


「もちろんです。どうしましょう? 誰か人を……」


「いや、大丈夫だ。姫を抱きしめていれば治る」


「本当ですか?」


「ああ。姫に嘘はつかない」


具体的には言えないが、嘘は言っていない。


「陛下。早く良くなって下さいね……」


姫は心配そうにそう言うと、私の頬に口付けた。

姫から私に口付けたのは初めてだ。

……何故初めてを色々と「今」してしまうのだ。


「……姫……」


「……どこか痛みますか?」


「痛みは無いが。そうだな……。姫、私の手を握っていてくれ」


「分かりました」


「姫、そのまま動いては駄目だ」


「はい」


「姫がそのままでいてくれたら大分楽になる」


「そうなのですか」


姫は益々心配げな表情をするが、手を握って動かないでいてくれれば大丈夫だろう。


「姫が愛しすぎて辛いだけだ。心配しなくていい」


詳しく説明は出来ないが、姫が愛しすぎて辛いというのは紛れもない事実だ。


「私も先程胸が苦しくなったのです。もう大丈夫ですが。私、動きませんから、早く良くなりますように」


姫は私を安心させるように微笑んで、私の手をギュッと握って言う。

……胸が苦しいか。

私も姫を想って胸が苦しくなった。恋に落ちた日に。

姫への特別な想いが恋になり愛になったように、姫の私への好意は恋になり愛になったのか……今?


姫、貴女は。

いつもの清らかな笑顔で、こんな状態の私に無自覚な告白をするのか?


「姫は、天使の様で悪魔の様だな」


「えっ?」


心の声が出てしまった。


「何でもない」


「悪魔って……」


「すまない。良く考えれば私が悪魔かもしれないな。姫はずっと天使のままだ。初めて会った時から」


そうだ。姫は私を好きだと言っただけ、口付けを求めただけだ。そんな天使の様な姫に、勝手に口付け以上の欲望を感じる私が悪魔なのだ。


「初めて会った時……」


「少し、話をしようか。その方が早く楽になれる」


話に集中すれば、私の邪な劣情も治まるだろう。

姫は初めて会った時の事を聞きたいらしい。

私は、全てを正直に話した。


そして、姫に恋に落ちた日の事も。

話し終えると、姫の瞳は潤んでいた。


感極まっている姫が愛しくて堪らない。純粋な気持ちで心から私は言う。


「姫、愛している。私を理想の相手と言ってくれてありがとう。姫の理想通り強くて優しい夫で在りたい」


「……初めから……庭園で会った日から……陛下は誰よりも……優しいです……。そのままの……陛下が……大好き……」


泣きながら、私が「優しい」と「好きだ」と、抱きついて言う姫。

私だって、胸が苦しくなってしまう。


「動いては駄目だと言ったのに」


姫の涙が伝染しないようにワザと言った。


「……ごめんなさい……」


それなのに、素直に謝ってしまう姫。


「結局、泣かせてしまったか」


先程、姫が泣きそうになった理由と今、姫が泣いている理由は違う。

先程の姫は私の愛を欲しがっていた。だから、与え涙は引いた。

今の姫は私の愛を知って泣いている。だから、止める事など出来ない。


こんな理由で姫を泣かせてしまうとは。そんな涙を姫が流してくれるとは……。

結婚式という晴れがましい今日。


私達の心は永遠に結ばれた。





____初夜


初夜の姫は、本当に初々しかった。

ずっと照れていて可哀想なほど顔を真っ赤にしていた。


もしかすると、私は姫が照れると冷静に姫を愛せるのかもしれない。

だが、姫が私を求めると……私の理性は崩壊してしまう。


初夜の後半は姫が私を求めた。だから私は制御が出来なくなってしまった。

一か月、清らかでも満足して幸せだったのは姫が照れていたからか。


心も体も結ばれた後、姫は私に言った。


「陛下、私こそありがとうございます。……私に一目惚れをしないでくれて」


この不思議な言葉の意味をすぐに私は知るのだが……。

姫は「初恋の君」ではなく「一目惚れ」にトラウマを持っていた事も。

そうなってしまった理由も。

彼らの行動の真実も。


知れて良かった。そのおかげで結婚後、姫に一目惚れする者が現れたが速やかに排除出来たのだから。

だが、一目惚れより厄介なモノがあった。


それは、華奢で可憐で天使の様な姫は……。

意外にも情熱的で体力があった。



そして、それは私も同じだという事だ。

新婚生活も書きたいですが、とりあえず今回のお話を楽しんでいただけたら嬉しいです♪

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