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隣に女子がいるのに眠れるのだろうかと思っていたが、いつの間にか熟睡してしまっていて、青タイにコートにマフラーという格好をしたⅠさんに、朝になって起こされた。
Ⅰさんはこれから学校に行くけど誠己はどうするん、と聞いた。私が、学校に行くにも教科書が無いし……と口ごもっていると、そうだよね、じゃあ私だけ行ってくる、たぶん今日も親は帰って来ないから、好きなだけうちにいればいいよ、コタツの上にコッペパンと玄関の鍵、置いてあるから、あとお昼、カップラーメンがあるからそれも食べていいよ、コッペパンの隣に置いといた、じゃあね、とてきぱき言って、部屋を出ていくとやがて玄関の鉄製のドアが閉まる重たい音がした。
私はとりあえず居間に行き、Ⅰさんに言われたとおり、あんことマーガリンの挟まったコッペパンを食べた。
それから私は無為に一日を過ごした。歯を磨いたりテレビを観たり、「チャンプロード」という雑誌があったのでそれを読み散らしたりした。
そうやってだらだらする一方で、どう考えてもいつまでもⅠさんにお世話になるわけにはいかないので、小山駅の駅ビルにでも行ってカツアゲをして、金を稼いで宿泊費としてⅠさんに渡そうかなどと考えた。これは楽しい想像だったが、平日の昼時に行ってもカツアゲの対象になる小中学生は駅ビルなんかにいないだろうと思い返しやめることにした。また、下校時に学校の校門へ行き、隆明が出てくるのを待とうかとも考えた。それで今日はⅠさんではなく隆明の家に泊めてもらう。しかしこれも、今日私が登校していないことを知っている教師やクラスメイトに見つかってしまうと面倒だ、と思われ、結局実行しなかった。
そんなことを考えながらまんじりともせず過ごし、やがて昼になって、やはりⅠさんに言われたとおりカップラーメンを食べ、暇でしょうがないのでⅠさんの部屋へ行った。そこでⅠさんには悪いと思ったが(今でも、Ⅰさんに悪かった、と思い続けているのだが)、興味を抑えきれずにクローゼットの中を物色してⅠさんの下着を発見し、たまらなくなってそれを嗅ぎながら自慰をした。後悔の念の残るままティッシュをゴミ箱の奥底に処理し、Ⅰさんの敷いてくれた布団に入って二時間も昼寝した。そんなこんなで、目を覚ますと、窓から見える陽はやや傾いて、夕方が訪れようとしていた。




