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 今年(2018年)の初め、私はこの話を書くためにⅠさんの墓へ墓参りに行った。


 その前日、フェイスブック上で友達になっている(まど)()に、Ⅰさんの墓がどこにあるか知らないか、フェイスブックを通して尋ねた。すると私たちの地元の町にある繁桂寺という寺だというので、次の日にその寺へ向かったのである。


 繁桂寺に入り、本堂の隣にある住職の住居へ行き、墓の所在を聞こうとすると、玄関先で住職の奥さんか娘と思われる中年女性の応対を受けた。I・Mさんという方の墓参りをしたいのですが、場所が分からないので……と私が言うと、中年女性は親切に墓の所在を調べてくれ、墓地の一番南側の並びの、東から六番目の墓だと教えてくれた。


 墓地は寺の境内に隣接している。私は早速言われた場所に向かった。


 Ⅰさんの墓は、黒の墓石を使った普通の大きさのもので、墓石の脇にある墓碑に、確かにⅠさんのことが彫ってあった。短めの戒名の下に、「平成十五年五月三十日 享年十九才 俗名○○○○」となっている。


(五月……十九才?)


 私はその墓碑銘に不審を抱いた。私の記憶が間違いなければ、Ⅰさんが亡くなったのは彼女が高校二年生に当たる年である。つまり享年は十六歳か十七歳になるはずで、しかも五月ではなく冬のことだった。Ⅰさんの一学年下の私が高校一年生で、学生服を着て葬儀に参加し、そのうえひどく寒い日で葬儀の終わりにはみぞれが降ったのだから、享年も季節も間違えようがない。


 この不思議を、私は家に帰ってから家族に話した。すると物に詳しい父が、「若くして亡くなったわけだから、もしかしたら親御さんが死を悲しんだあまり、遺骨を手放せずにすぐに墓に入れられなかったのかも知れないね。それで十九歳になる年にようやく墓に遺骨を入れて、そのときの日にちを(墓碑に)刻んだんじゃないか」という意味のことを言った。その後私はネットで多少調べてみたが、やはり墓碑には亡くなった日を彫るのが一般的なようで、父の想像は間違っているように思える。寺の住職の家にもう一度行き、尋ねてみればあるいはこのわけが分かるかも知れないが、そこまでする気はさすがに起きない。


 ――とにかく私は墓碑銘に不審を抱きながらも、とりあえず墓に拝んだ。私は手ぶらだった。花や、線香の一本くらい持ってくれば良かったと少し後悔したが、来ないよりかはいいだろう。それに、墓の花立にはややしおれていたがすでに花が活けてあった。


 墓に手を合わせ、目をつむると、自分でも意外なことに言葉が体の内にあふれ出てきた。


(Ⅰさん、お久しぶりです。ずっと来れなくて、ごめん。今度、Ⅰさんのことを小説にしようと思ってます。そんなことをして、その前にだけこうしてお墓に来て……恨むなら、恨んでください)


 そこまで私は心内で呟くと、あんまり自分が感傷的できざなように思えてばかばかしくなり、手を下ろして目を開いた。


 私の目の前で、Ⅰさんの家の墓石が、冬の弱々しい夕陽を浴びて、その黒い表面に光を反射させていた。

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