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幽鬼姫伝説  作者: 奏 舞音
第三章

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第六十一話 城内の戦闘

 朱紅城の中に一歩足を踏み入れると、見える景色は一変した。

 外からだと何事もない、平和な城内だったのに、中に入ると何十人もの兵士達が斬り合い、血を流すという光景が広がっていた。

 血を流しながら倒れている者が何人もいる。

 誰も助けようとしない。

 いや、助ける余裕などないのだ。

 そうしている間に自分が斬られてしまうから。


「な、何……これは……どういう……?」


 目の前の光景が信じられない。

 本来ならば皇帝を守るはずの兵士たちが、あろうことか皇帝の住む朱紅城で血を流すなど。

 それに、この場所は皇帝陛下への拝謁のための広場だ。

 政務のための陽煌殿ようこうでんの前で、兵士同士が争う異常さに華鈴は言葉を失う。


(髃楼……あなたは何がしたいの?)


 これはすべて髃楼によるものだろう。

 しかし、一体何のために? 


「ぐぅあああああ……!」


 兵士たちの苦し気な叫び声が、華鈴の耳に届く。

 仲間同士で争い、斬り合い、血を流す。兵士たちが望んだ訳ではないのに。

 髃楼の目的を考えるのは後だ。このままではいけない。兵士たちを止めなければ……。

 兵士の数は、約五十人。

 倒れている者も、死んではいないようだ。

 仮にも兵士、鍛えられているのだろう。

 華鈴がこの混乱した兵士たち相手に何が出来るのか分からないが、やるしかない。これ以上、髃楼の手の平の上で転がされたくなかった。


「剣を、下ろしなさい! こんなこと、もうやめて!」


 今までに出したことのない大声で、華鈴は叫ぶ。

 しかし、誰も華鈴の声を聞きはしない。戦闘は、止まらない。


「やめて! もう、やめなさい!」


 近くにいた兵士が華鈴に気づく。

 その目は虚ろで、焦点が定まっていない。

 意識もあるのかないのか分からない。

 鎧の音がかちゃりと響いたかと思うと、すぐ目の前には彼の刃が迫っていた。

 斬られる、そう思った時……目の前は闇に包まれた。痛みは襲ってこない。


『……ユ、鬼……ヒメ』


 華鈴の視界を覆っていた暗闇が薄れると、華鈴の周囲にはここにはいない、いてはいけないはずの幽鬼たちがいた。

 何故、結界の中に入ることが出来たのだろう。

 華鈴は目を丸くして自分を守ってくれた幽鬼たちを見る。でも、今はそんなことを考えている場合ではない。

 華鈴一人では難しかったが、幽鬼たちが居てくれれば、この戦闘を止められる。


《兵士たちを全員気絶させなさい!》


 髃楼に何らかの形で操られているのなら、その意識を奪えばいい。

 幽鬼たちに力加減が出来ることを信じて、華鈴は言霊を使う。

 華鈴の命令通りに、幽鬼たちはすぐに兵士たちに向かっていった。

 恐ろしい幽鬼を相手にして、生きる屍のようになっている兵士たちは恐怖心さえないらしい。

 何の感情も表に出さずに、ただ血を求めて戦っている。

 しかし、ようやくこの戦闘に終わりが見えてきた。

 兵士の半分以上が幽鬼たちによって気絶したのだ。

 倒れた兵士たち一人一人の無事を確かめながら、華鈴はそれを確認する。


「よかった、みんな生きてる」


 兵士たちが広場に倒れているという異様な光景ではあるが、朱紅城にようやく静けさが戻った。


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