来世
ここは何処だ。
真っ暗で何もない。
まだ闇の世界か?
いや、川から流れついたはず。
白い道も赤い川もない。
ここからどう行けばいいのか。
「何もないのは当たり前だ」
その声は・・・鬼?
声はすれども姿はない。
「まさか後をつけてきたのか?」
「ふふ、神出鬼没だからな」
冗談とも言えぬ嘲笑い。
「何もないとはどういうことだ。俺に未来はないというのか」
見えない鬼をきょろきょろと探す。
「未来というのは過去があってからだろ」
確かに。
未来はこれから創り上げていくもの。
創ってもいないのに見えるはずがない。
しかし、ここで行き止まりになってしまうのか。
後戻りは出来ない。
「原点回帰するしかないな」
鬼は言う。
もう自分でなくなってしまう。
記憶も細胞もすべてがリセットされる。
その後は人間とは限らない。
動物であり、植物であり新たな生命として生まれ変わる。
「未来を見るつもりだったようだが残念だな」
いや、魂が残っているのなら生まれ変わりも悪くない。
「本当にそれでいいのか?」
鬼が問う。
現世から離れ彷徨うのなら新たな生命も有りかなと。
「覚悟が出来ているのなら生命の源へ行くがよい」
記憶が無くなる。
細胞が散っていく。
どこかで生命が繋がれるのなら。
そして・・・
何もない暗闇へと消えた。




